テキストを読んで、答え合わせをして読解の授業は終わり。なんだかつまらない。
学習者は、教師が渡した教材を黙々と読んでいるだけ。教師は何もすることがなく...これでいいんでしょうか。
本書は、そんな現場のお悩みから始まり、精読や速読といったさまざまな読み方の種類を解説。
さらに教材の作成方法、実際に授業で使える読み物の紹介がなされ、最後まで読み応えたっぷりの教本となっています。
『読解授業の作り方』の特徴
本書は、大きく4章に分けられています。
最後に巻末付録がついており、そこに授業で使える実際の読み物も収録されています。
- 読解授業は難しい?
- 教える前に
- 授業を組み立てよう
- 読解授業あれこれ
- 巻末付録
各章の特徴
Ⅰ章 読解授業は難しい?
第1章では、読解授業におけるお悩みが、教師と学生の両方の目線で語られています。
- 読解授業というと、内容がわかっているかどうかを確認し、読み物についている設問に答えさせるだけ...他にどんな方法が?
- クラスではいつもみんな一人ずつ音読します。他の人が読んでいる時、私は自分が読む箇所を確認しているので、聞いていません。
5ページにわたり、様々なお悩みがリストアップされています。
同時に、その解決策として、本書のどのページを見ればよいのかも示されています。
Ⅱ章 教える前に
第2章では、精読・速読・黙読・音読といった基本的な読み方についての解説があります。
私たちは知らず知らずのうちに、これらの読み方を使い分けています。新聞を読む(=スキミング)途中で、気になる記事があったら精読し、内容が把握できたらまたスキミングに切り替えます。
-『読解授業の作り方』p.15
実生活で私たちは、「これは精読」と決めて読むのではありません。
それなのに授業では「音読・精読」に偏ってしまうことも。
ここから、「実際に"読む"には、様々な読み方を実践していく力が必要となるのだ」ということがわかります。
その後、「読解授業の目的とは?」と、読解授業をする目的にも注目。
実際の教材や日本語の詩を例に挙げながら、日本語を読む目的が4つのカテゴリに分類されて解説されています。
Ⅲ章 授業を組み立てよう
第3章では、以下の3つのステップに沿って、読解授業中の教師の役割について学ぶことができます。
- 読む前に
- 読んでいる間
- 読んだ後で
それぞれの段階で、
- どのような教材を使って
- どのような会話の流れで進めていけばいいのか
が詳しく書かれています。
語彙や表現を確認する時間を1つとっても、音読や訳語の使用など「どのように確認をすればいいのか」が細かく解説されていて、参考になります。
第3章の中盤では、読解授業を1コマ行うことを前提にした、簡単な教案を見ることができます。
教案の種類も、
- 精読の授業(初級)
- 精読の授業(中級)
- 速読の授業(中級)
と、複数のパターンが用意されている点がありがたいです。
「教案ではなく、コース全体のカリキュラムの作成方法についてもう少し知りたい」という方は、
本書のp.54から「カリキュラムの作り方」があるので、そこを読むことをおすすめします。
第3章の後半では、読解教材の作成方法に移ります。
- 表記の調整
- 語彙リストの作り方
- 質問シートの作り方
- 生教材の加工方法
など、実際の例が見られます。
また、すでに「自作教材を使ってる」という方でも「実は学習者にとって負担の大きいオリジナル教材になってない?」と自身の教え方を見直すきっかけになります。
Ⅳ章 語彙授業あれこれ
第4章では、様々な読解のアイディアが掲載されていて、読んでいるだけでも楽しくなります。
- イラストを使って
- 切り分けた読み物を使って
- 朗読したり
- 漫画の場合
- レアリアの場合
- 新聞の場合
など、まだまだあります。
「読解授業のアイディアがほしい!」という方は、ぜひこの章を読んでみてください。
巻末付録
巻末付録では、実際の授業で使うことができるタスクシートや読み物教材、イラストや写真、会話などが収録されています。
20ページ以上にわたり教材が掲載されており、これを参考にオリジナル教材を作ることもできます。
関連情報
関連書籍
この「日本語教師の7つ道具シリーズ」は、語彙だけでなく他の授業の解説本も出ています。
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読解授業のアイディアがたっぷり入っており、巻末についている読み物も実際の授業で使えるのが嬉しい一冊。
読解の授業で終わらず、そこからさらに別の活動に繋げるヒントも盛り沢山です。