読み物教材

『読解授業の作り方』(2013)

学生

テキストを読んで、答え合わせをして読解の授業は終わり。なんだかつまらない。

先生

学習者は、教師が渡した教材を黙々と読んでいるだけ。教師は何もすることがなく...これでいいんでしょうか。

本書は、そんな現場のお悩みから始まり、精読や速読といったさまざまな読み方の種類を解説。

さらに教材の作成方法、実際に授業で使える読み物の紹介がなされ、最後まで読み応えたっぷりの教本となっています。

『読解授業の作り方』の特徴

本書は、大きく4章に分けられています。

最後に巻末付録がついており、そこに授業で使える実際の読み物も収録されています。

本書の構成
  1. 読解授業は難しい?
  2. 教える前に
  3. 授業を組み立てよう
  4. 読解授業あれこれ
  5. 巻末付録

各章の特徴

Ⅰ章 読解授業は難しい?

第1章では、読解授業におけるお悩みが、教師と学生の両方の目線で語られています。

  • 読解授業というと、内容がわかっているかどうかを確認し、読み物についている設問に答えさせるだけ...他にどんな方法が?
  • クラスではいつもみんな一人ずつ音読します。他の人が読んでいる時、私は自分が読む箇所を確認しているので、聞いていません。

5ページにわたり、様々なお悩みがリストアップされています。

同時に、その解決策として、本書のどのページを見ればよいのかも示されています。

Ⅱ章 教える前に

第2章では、精読・速読・黙読・音読といった基本的な読み方についての解説があります。

私たちは知らず知らずのうちに、これらの読み方を使い分けています。新聞を読む(=スキミング)途中で、気になる記事があったら精読し、内容が把握できたらまたスキミングに切り替えます。

-『読解授業の作り方』p.15

実生活で私たちは、「これは精読」と決めて読むのではありません。

それなのに授業では「音読・精読」に偏ってしまうことも。

ここから、「実際に"読む"には、様々な読み方を実践していく力が必要となるのだ」ということがわかります。

その後、「読解授業の目的とは?」と、読解授業をする目的にも注目。

実際の教材や日本語の詩を例に挙げながら、日本語を読む目的が4つのカテゴリに分類されて解説されています。

Ⅲ章 授業を組み立てよう

第3章では、以下の3つのステップに沿って、読解授業中の教師の役割について学ぶことができます。

  1. 読む前に
  2. 読んでいる間
  3. 読んだ後で

それぞれの段階で、

  • どのような教材を使って
  • どのような会話の流れで進めていけばいいのか

が詳しく書かれています。

語彙や表現を確認する時間を1つとっても、音読や訳語の使用など「どのように確認をすればいいのか」が細かく解説されていて、参考になります。

第3章の中盤では、読解授業を1コマ行うことを前提にした、簡単な教案を見ることができます。

教案の種類も、

  • 精読の授業(初級)
  • 精読の授業(中級)
  • 速読の授業(中級)

と、複数のパターンが用意されている点がありがたいです。

教案ではなく、コース全体のカリキュラムの作成方法についてもう少し知りたい」という方は、

本書のp.54から「カリキュラムの作り方」があるので、そこを読むことをおすすめします。

「評価する」と題して、読解授業における評価方法や、「評価表」の作り方やサンプルも第3章の最後に公開されています。

第3章の後半では、読解教材の作成方法に移ります。

  • 表記の調整
  • 語彙リストの作り方
  • 質問シートの作り方
  • 生教材の加工方法

など、実際の例が見られます。

また、すでに「自作教材を使ってる」という方でも「実は学習者にとって負担の大きいオリジナル教材になってない?」と自身の教え方を見直すきっかけになります。

Ⅳ章 語彙授業あれこれ

第4章では、様々な読解のアイディアが掲載されていて、読んでいるだけでも楽しくなります。

  • イラストを使って
  • 切り分けた読み物を使って
  • 朗読したり
  • 漫画の場合
  • レアリアの場合
  • 新聞の場合

など、まだまだあります。

「読解授業のアイディアがほしい!」という方は、ぜひこの章を読んでみてください。

巻末付録

巻末付録では、実際の授業で使うことができるタスクシートや読み物教材、イラストや写真、会話などが収録されています。

20ページ以上にわたり教材が掲載されており、これを参考にオリジナル教材を作ることもできます。

関連情報

関連書籍

この「日本語教師の7つ道具シリーズ」は、語彙だけでなく他の授業の解説本も出ています。

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読解授業のアイディアがたっぷり入っており、巻末についている読み物も実際の授業で使えるのが嬉しい一冊

読解の授業で終わらず、そこからさらに別の活動に繋げるヒントも盛り沢山です。

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